シリーズ:映像と女性『女性シャーマンと信仰 -日本とインドネシアの映像をとおして-』
日本映像民俗学の会では、発足当初から、映像民族誌映画を観て「映像表現の多様性」を議論するワークショップを行ってきました。すなわち映像作品に組み込まれた民俗事象(映像シークエンス)を文化人類学、民俗学などの人文諸科学の理論や視点を加味して解きほぐし討究を深めることを狙いとしてきました。
2025年度は、前年度の『映像と女性』のテーマを引き継ぎ、さらなる議論の深化を目指すことにしました。議論の入口は、「女性と信仰-日本とインドネシアの映像をとおして」をテーマに関連する記録映像作品を土台に。日常生活に垣間見る女性の信仰活動と映像について討議を深めて行きたいと思います。
今回の映像資料は以下の作品を予定しております。PDF概略

野田真吉 『神の御国ができました』(25分)1964 日本
話題提供 大塚正之
天照皇大神宮教について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%85%A7%E7%9A%87%E5%A4%A7%E7%A5%9E%E5%AE%AE%E6%95%99
概要
信者数は国内で約49万人(2021年末現在)。本部は、山口県熊毛郡」田布施町大字波野10123。山口道場は、山口県山口市平井188。東京道場は、東京都千代田区九段北4丁目3-18。
教祖は熊毛郡田布施町の農婦、北村サヨ(大神様、1900年1月1日-1967年12月28日)(出生地:山口県玖珂郡日積村大里(現在の柳井市日積))。二代目教主はサヨの孫娘(サヨの長男北村義人(若神様、宗教法人天照皇大神宮教代表役員)の娘)、北村清和(姫神様、1950年4月27日-2006年6月7日)。三代目教主は清和の娘・北村明和(明和様、1990年1月9日-)。1946年、教団ではこの年を「神の国の紀元元年」と呼び、独自の元号「紀元」を使用し始めた。 なお、教団の名称は、第二次大戦終結前の国粋主義的な歴史教育[3]を受けた人々に対して、宇宙の最高神の教えであることを示すべく、教祖の肚に入った神によって呼称されたものである。内実としては、神道(皇大神宮・伊勢神宮)とも他の既成宗教や新興宗教ともまったく関係がない。とりわけ、『日本書紀』や『古事記』で書かれているような日本神話の神々とは、無関係である
すなわち、天照皇大神宮教の神とは、仏教でいう本仏やキリスト教でいう天なる神と同じ、宇宙絶対神であるとしている。
このことに該当する記述は、教団が出版している『生書』(「せいしょ」)第一巻によると、次のとおりである。「夜はまた夜で肚のもの(=教祖の肚に入った神―当編者補足)は、思いもよらぬことを教祖に話して聞かせるのである。『おサヨ、天照皇大神宮というのは、日本小島の守護神と思うなよ。宇宙を支配する神は一つしかありゃしない。キリストの天なる神、仏教の本仏というのもみな一つものぞ』と」。
神の国
天照皇大神宮教では、「世界平和は己の心の平和から」と捉え、心が清らかで正しい人間になることが、まず大切であると説いている。そして、個人の心の平和から、家庭の平和、学校の平和、職場の平和、地域の平和へと拡充していくことを目指している、という。
教祖の肚に入った神の目的は、地上神の国建設であり、教祖が説く教えを中心に、神行(しんこう)の日々を送る同志の世界ができたことで、「神の国ができた」としている。そして、この世界が広がることが、地上神の国建設である、と説明している。
教祖
教祖の北村サヨは、小学校6年間を経たのち、嫁いだ農家の主婦であったが、放火の疑いのある自宅の火事を機に、丑の刻参りや水行を始めた。そして、1944年(昭和19年)5月4日、肚で何者かがものを言うようになり、人々に教えを説き始めた、という。10日には「名妙法連結経」(仏教の「南無妙法蓮華経」ではない)を唱えたという。『生書』第一巻によると、サヨは、神から「世界が一目に見えるめがね」を授かり、宇宙一切のもの、そして、人の過去の行状から前世にいたるまで、見ることができたという。その後、サヨは国内もとより、世界各国に何度も巡教し、その教えを広めた。その様子は、『生書』の第一巻から第四巻までに記されている。
北村皆雄 『日本のおんなたち 津軽じょんがら女考 ―青森―』(25分)1976 日本
話題提供 北村皆雄
東北地方には、木のぼっくいで作られた馬と女性のカップル像が祀られている。「オシラさま」と呼ばれ、特に女性に慕われ、家の安寧を護ってくれると信じられている。旅好きの神様で、夢枕に現れると旅に出なければならないという。そんなことから津軽の女たちは1年に一度お寺に集まって「オシラさま遊ばせ」をする。オシラ様は、娘と馬の「馬娘婚姻譚」というお蚕様の発祥伝説としてイタコたちに語り継がれている

ティモシー・アッシュによるバリ島の霊媒を見る
Jero on Jero: A Balinese Trance Séance Observed
1981 17min
プログラム解説 (牛島 巌)
(解説ならびに日本語訳は、本会顧問牛島巖先生によるものです。図版は亘純吉が挿入した)
シャーマン:霊的存在(精霊・神・霊魂)と直接に交流・交通。トランス状態:常と異なる意識、意識の変化した(別人化した)状態、変性意識。憑霊:憑入型、漂着型、憑感型
ティモシー・アシュは、正確な記録映像に他の情報を加えて映像表現をしようと、試みた映像作家であるとともに、人類学者とうまく提携して、人類学の教育用のフィルムを数々制作した。1968年ジョン・マーシャルと共に、人類学ドキュメンタリー・センター(後のDocumentary Educational Center)をつくり、シークエンス概念という、相互行為の一連のプロセスを見せる方法で、研究素材および人類学教育用に利用できる作品を制作した。
1968年に人類学者ナポレオン・シャニオンと協力し、南米・ベネズエラの熱帯雨林に住む先住民族ヤノマモの研究に着手、7年間に39本の映画を制作した。アシュはのちのインドネシアのシリーズ(1979-1994)では、場面展開に撮られた側の人のインタビュウ解説をつけるだけにしている。
バリ島の霊媒シリーズ インンドネシア バリ島において、人類学者リンダ・コナーと映像作家ティモシーとパティ・アシュは、1980年代に、霊媒Joro Tapakanに係る4部作を製作する。
Joro on Jero: A Balinese Trance Seance Observed 1981 17min
Joro Tapakan: Stories in the Life of a Balinese Healer 1983 25min
The Medium is the Masseuse: A Balinese Massage 1983 30min
Releasing The Sprit: A Village Cremation in Bali 1991 45min
ジョロ・タパカンは、女性であるが、超自然的な力を訓練で身につけており、20年余り霊媒として修練し活動し、交霊式を実践してきた。彼女は、通常の薬では治らなかったひどい病気(巫病)に苦しんだ後に、霊媒となった。気が触れたと看做され、交霊式に呼ばれ、守護神が指定され、霊媒になるべく(神から)選別された。修行し、聖別の試験(成巫式)を受け、その際に始めてトランス状態を体験する。こうして神のお召しの実践が可能になった。その後、不治の症候は消えた。年を経るにつれ、評判を獲得し、依頼人も増え、独自の呪薬を獲得して、呪医としても繁盛している。
「バリの交霊式」 バリの村人が、霊媒(sprit medium)Joro Takapan に、神霊の判事を依頼する。彼女はトランス状態になり、子供の死因を探求するために、神霊と、交流し託宣を吐露する。
トランスに入る前の準備、聖水による浄化に続き、ジョロは、祝福されて、トランス状態に入る事を、守護霊に願う。長いマントラ(真言)を唱えでいるうちに、ふっとトランス状態に入る。神霊の宣託は、特別な葬送儀礼がなされていないので、怒っている、という内容。ここでジョロは元に戻り、解説をする。 再度、どのような儀礼を、どこでするのかを聞くためにトランスに入る。霊媒の口を通じて、父の霊と親族との対話が始まる。「私たちを許してください」「適切な儀礼をしなかった」「正しい場所でしなかった」「お金を供物にしなさい」「語り終えた。私はもう行く」など。
まだ、供物の種類、仕方が不明であったので、もう一度トランスに入る。今度は、子供の霊が降りてくる。「なんで死んだのか」「肺を貫かれて死んだ」「誰がしたのか」「ある女だが、いえない」「どんな供物をして欲しい」など、子供と父の対話が続く。子供の死因は妖術と判断される。
➡️PDF 資料

参考映像 時間に余裕があれば参考映像として提供したい
Joro on Jero: A Balinese Trance Seance Observed 1981 17min1980
人類学者リンダ・コナーと映像作家チムとパティ・アシュは、A Balinese Trance Séanceのビデオを持ってバリ島に帰り、ジョロ・タカパンに見せる。自身のトランス状態を見てる間に、ジョロはリンダにコメントを語る。憑依されている間のどう感じているか、妖術に対する考え方、超自然的な世界に対する理解などが言及される。撮られている側の人のインタビュー解説を盛り込んだ作品.
【日 時】 2024年7月13日(土)13:30~(13:00開場)
13:30~13:40 代表挨拶(北村皆雄)、プログラム解説(亘 純吉)
13:40~14:10 上映 野田真吉 『神の御国ができました』 25分 1964
解説:大塚正之
14:10~14:25 ≪休憩≫
14:25~14:50 上映 北村皆雄 『日本のおんなたち 津軽じょんがら女考―青森―』25分 1976
解説:北村皆雄
14:50~16:00 ≪休憩≫
16:00~16:50 上映 Balinese Trance Séance 30 min 1980
解説:亘 純吉
17:30 討論・質疑応答 ※18:00~ 懇親会
【資料代】 会員:無料、非会員:500円
【会 場】 四谷スポーツスクエア 会議室R(47席)
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-6-4
アクセス:JR「四ツ谷」駅徒歩約2分
