日本映像民俗学の会の15年 1974~1992』
牛歩遅々の弁このパンフレットは「日本民俗学の会」が発足して15年を迎えるのを機に、先の13回総会の決定に基づいて、会の記録資料としてまとめたものです。当会の前史にあたる「映像民俗学を考える会」から1978年の創立総会にはじまり、今日にいたるまで、会員の皆さんとともに歩んできた、会としての活動の概括的機録です。
15年にわたる会の歩みをふり返ってみますと、長かったようで短かったようです。また、会活動の牛歩遅々たる歩みをも、ひしひしと感じました。だが、もともと文化創生せと形成の歩みは各人のさまざまな環境と社会とのかかわった、物心両面の固有な生活形態、独自な感性、習俗などが綾をなし、習合し、熟成されっていった、屈折した長い歴史過程のなかに生み出され、受け継がれ、育てられてきたものです。そして、それは生成必減の人間の運命と共にした、人間の営みの姿と言いえるかと思います。ともあれ、文化創生の歩みは一朝一夕に、手品のように生れるものではない、気の遠くなる果てもない道そのものであるといえます。そんなことを考えると15年間ほどで牛歩遅々などということは当然すぎて、おかしなことでしょう。
とくに、我国の昨今文化状況は金権万能至上主義一辺倒の時流に狂奔し、その渦中にほとんどの文化活動も巻き込まれ、吸収され埋没されてしまい、体制権力下に画一化され、商品化をあからさまにしています。このような文化状況は本来の内実ある文化活動から離反し本末転倒した道であり、文化活動が衰弱、廃退した世紀末的な時代の到来に他なりません。このことは人間の生の営みに即した、人間の自由な表現とその享受の共有をめざす文化活動の一端を、すくなくとも担い、すすめようとする私たちの会活動にとって、現状況が逆風そのものであり、無数の障害に囲まれ、行く手が阻まれるのも当然だと私は楽天的に思っています。
それだから、私たちの牛歩遅々たる歩みは初心への執念を会員ともども、逆境のなかでも、よたよたしながらも、ひたすらに歩き続けてきた会の成果だとみなしてもよいように、私は思います。以上はこのパンフレットを読みながらの私の感想にすぎないので、自画自賛に落ちるかもしれません。ひょっとすると長年の牛歩遅々の弁解のようにとられるかもしれません。いずれにせよ「牛歩遅々」の会の歩みを率直に自分のなかでかみしめ、マイナスの部分を反省のテコにして、私の今後のプラスに転化していこうと念じています。ところで、会員の皆さんの感想はいかがなものでしょうか。お聞かせ下さい。 最後に一言。パンフレットにリストアップしてあります各会員の作品、その他の参考作品として上映いたしました諸作品を会員の方々が、各々の居住地域や会活動にそった集会などで利用、活用したい希望があれば、下記の各センターに連絡相談して下さい。可能な限り、作品のお世話をいたします。
1992年8月
<事務局名 中略>
野 田 眞 吉
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